「供養をしていないために、あの子が苦しんでいるのではないか」。そのような言葉を目にしたら、これまで大切に思ってきた気持ちまで否定されたようで、つらくなることでしょう。
お寺で法要をしていないことを理由に、「親には幸せが訪れない」と決めつける必要はありません。供養を望まれるなら、年月がたってからでも始められます。恐れに急かされず、ご自身に合う形を一緒に考えていきましょう。
お寺ネット 仏事相談|相談者:mamaさん|2008年2月11日20:29|No.155「水子供養は必ず?」
当時の相談と回答を読みやすく要約し、住職の立場から解説を加えています。
ご相談:供養をしていないために、子どもは苦しんでいますか
10年前に中絶、5年前に流産を経験されたmamaさんは、お寺で水子供養をしていないものの、お子さんのことを忘れず、ご自身なりに懸命に生きてこられました。
ところが、あるお寺のサイトで、戒名をつけて供養しなければ親に幸せは訪れないという趣旨の説明を読み、大きなショックを受けたそうです。「お寺で供養をしなかったために子どもが苦しんでいるのでしょうか。時間がたった今からでも供養できますか。どのようにすればよいでしょうか」というご相談でした。
当時の回答:巳朱さん(No.156)
2008年2月11日21:43の回答では、水子供養に「必ずこの形でなければならない」という一つの決まりがあるわけではなく、お地蔵さまにお参りする、お経を読む、無理のない範囲でお寺に供養をお願いするなどの方法が示されました。
また、お子さんへのお詫びの気持ちに触れつつ、親が幸せになるための取引としてではなく、お子さんを思って供養することの大切さを伝えています。不安をあおる言葉に押されて供養する必要はなく、年月がたっていても構わない、という励ましの回答でした。
今回の補足:当時の「お詫び」という表現を、流産された方や、さまざまな事情で中絶を経験された方が、責められるべきだという意味に受け取る必要はありません。また、供養を通してご自身の心が安らぐことも大切です。悲しみを抱えたご本人へのいたわりと、お子さんを大切に思うことは、両立するものです。
住職からの加筆:「供養しないと不幸になる」と考えなくて大丈夫です
お寺での儀式をしていない、戒名もない、何年も過ぎてしまった。そのことだけで、お子さんの苦しみやご家族の不幸を決めつける根拠はありません。住職として、亡きお子さんを恐れる存在として語り、ご家族を追い詰めるような説明はしたくありません。
供養は、怖いことを避けるために代金を払う行為ではなく、仏さまに手を合わせ、亡き方を大切に思う営みとして受け止めていただきたいと思います。mamaさんがこれまでお子さんを思ってこられた時間も、お寺に行っていなかったという理由で、無意味になるものではありません。
「忘れてはいけない」「一生償わなければ」と、ご自身に休むことを許さなくなる必要もありません。日常で笑顔になることや、幸せを感じることは、お子さんを大切に思う気持ちと矛盾しません。
5年、10年たってからでも、供養はできますか
はい。供養をしたいと思った今から、ご相談いただいて構いません。「遅すぎた」と責めるためにお参りするのではなく、今のお気持ちを大切にする時間として考えてみてください。
命日がはっきりしない場合や、当時のことを詳しく話したくない場合も、その旨をお寺に伝えましょう。法要の申し込みに必要な情報はお寺によって異なりますが、何を伝える必要があるのか、話せる範囲で相談できます。
命日やお彼岸などをきっかけにする方も、日常の中で静かに手を合わせる方もいます。特別な日まで待たなければいけないわけではなく、つらいときに無理をして予定を決める必要もありません。
戒名や位牌は、必ず用意しなければなりませんか
戒名・法名、位牌、地蔵尊への奉納などの扱いは、宗派やお寺によって異なります。それぞれの教えや作法に意味がありますが、「これがないからお子さんが苦しむ」「高い供養を選ばなければ不幸になる」と、一律に結びつけないでください。
読経のみの供養ができるか、戒名や位牌を希望する場合はどのように扱うか、今後のお参りはどうすればよいか。希望する内容と費用を、お寺へ事前に尋ねましょう。大きな仏壇や高価な仏具をそろえてからでなければ、手を合わせられないということではありません。
自宅で、今できる小さなお参り
静かな時間に手を合わせ、「大切に思っています」「安らかでありますように」と、心の中で語りかけてみることから始められます。言葉にならない日は、ただ座って思いを寄せるだけでも構いません。
無理のない範囲で花を一輪飾る、手紙を書く、ご縁のあるお経を読む、写経をするなども一つの方法です。すべて行う必要はありません。手紙を誰かに見せたり、悲しみを無理に言葉にしたりしなくてもよいのです。
近くのお地蔵さまにお参りする場合は、その場所の決まりに従いましょう。供物を置けない場所もあります。自宅で線香やろうそくを使う場合は火の扱いに気をつけ、火を使わず合掌する方法でも構いません。
安心して相談できるお寺を選ぶために
最初の問い合わせでは、「年月がたっていますが、水子供養を考えています。初めてなので、方法と費用を教えてください」と伝えればよいでしょう。事情を詳しく説明するのが難しければ、そのことも伝えて構いません。
申し込み前に、読経の内容、個別か合同か、費用の総額、追加の奉納や継続費用の有無、名前の読み上げや郵送物の扱いなどを確認します。プライバシーに関する希望も、遠慮せず相談してください。
不幸を断定して急いで申し込ませようとする、予算を超える供養を繰り返し勧める、質問への説明が十分でない。そのように感じたら、その場で決めず、いったん離れて別のお寺に相談して構いません。供養の形や金額で、親としての思いの深さを比べる必要はありません。
ご自身の心も、大切にしてください
供養をして涙が出ることも、すぐには気持ちが変わらないこともあります。一度の法要で悲しみが消えなければ失敗だ、と考えないでください。供養するかどうか、いつ行うかも、ご自身のペースで考えてよいのです。
つらさを一人で抱えきれないときは、信頼できる人や、流産・死産などの喪失に寄り添う相談先へ話してみる方法もあります。お寺への相談と、生活や心身を支える専門家への相談を、どちらか一方に絞る必要はありません。
今からでも、できることはあります。そして、今すぐ何かをしなければ不幸になるわけではありません。お子さんへの思いと、ご自身のこれからの暮らしを、どちらも大切にしていただきたいと願っております。合掌
関連する仏事相談
水子供養の方法・お寺選びの案内 ― 寺院ごとの案内は、申し込み前に最新の内容をご確認ください。
水子供養は今の彼と行ってもいい?方法とお寺選び ― 一緒にお参りする方についての相談です。
※2008年の相談No.155・回答No.156をもとに編集しました。当時の回答と今回の加筆を区別しています。供養の具体的な作法は宗派・寺院により異なります。

コメントで応援してあげてください