父は臨済宗、先祖は日蓮宗|家族で宗派が違うときの供養とお経

宗派が違う家族の供養について、寺の和室で母娘が僧侶に相談するイラスト。お寺ネット仏事相談室のロゴ入り。

父を供養したい。そして、代々のご先祖さまも大切にしたい。その思いから毎日お経を唱えてきたのに、宗派が違うと知って戸惑われたのですね。宗派が違うからといって、どちらかを偲ぶ気持ちを諦める必要はありません。ただし、宗派のお勤めや位牌の作法には違いがあります。日々の祈りと、お寺にお願いする正式な法要を分けて考えてみましょう。

お寺ネット 仏事相談/相談者:ゆめさん/2008年2月12日16:59/No.161「一家に違う宗派」
以下は当時の相談・回答(ご相談原文)を整理し、新たな解説を加えたものです。

目次

ご相談:父と先祖で宗派が違います

1年前に父が亡くなりました。母は元気で、実家には仏壇があります。私自身も父やご先祖さまを供養したいと思い、毎日手を合わせています。

最近、代々のご先祖さまは日蓮宗だと知りました。一方、父は長男ですが、事情があって次男が家を継ぎ、父は臨済宗です。私はこれまで毎日、般若心経を唱えていましたが、お経も違うので迷っています。

自宅には仏壇はありませんが、「先祖代々」の小さな位牌を作りました。どのようにお祀りし、供養すればよいのでしょうか。お経はどうしたらよいのでしょうか。

当時の回答:賢潤房さん(No.162)

2008年2月12日19:04の回答では、ご先祖の信仰を大切にするなら「日蓮宗に改宗される他はありません」と述べたうえで、今後、日蓮宗の菩提寺と付き合う予定がなければ、ご縁のある臨済宗に宗旨替えすることも一つの方法とされました。そして、相談者とお母さまが納得して供養・信仰できる方を選ぶよう勧められています。

補足:これは当時の回答者の見解です。「先祖を大切にするには必ず改宗しなければならない」と、すべてのご家庭に当てはめることはできません。以下では、改宗を前提にせず、現在のご縁と宗派ごとの作法を整理します。

住職からの加筆:改宗を急がなくても大丈夫です

お父さまとご先祖さまの双方を思い、手を合わせることと、ご自身がどの宗派の教えを信仰し、どのお寺と継続してお付き合いするかは、関連はあっても同じ問題ではありません。供養したいという願いだけで、直ちに宗派を決め直す必要はないのです。

宗派を選ぶときには、教えへの理解、ご自身の納得、ご家族の気持ち、現在の菩提寺との関係を大切にしてください。お父さまが長男だったことや、叔父さまが家を継いだことだけで、ご自身の信仰を一律に決めることもできません。まず、お母さまにこれまでのお寺とのご縁を聞いてみましょう。

般若心経とお題目:お勤めには宗派ごとの違いがあります

臨済宗・黄檗宗の公式サイト「臨黄ネット」では、般若心経をはじめ、日常に読誦される経典が紹介されています。一方、日蓮宗の公式案内では、家庭のお勤めを法華経の読誦と唱題を中心に説明しています。唱題とは、「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えることです。

ですから、「どのお経も同じ作法で使える」「般若心経だけで日蓮宗の正式なお勤めにもなる」とは申し上げられません。お父さまの臨済宗のお寺には、ご家庭で用いる経本、読む順序、回向の仕方を教えていただくと安心です。日蓮宗のご先祖さまの法要については、そのご供養を担うお寺に確認してください。

これまで般若心経を唱えて、お父さまを思ってこられたことを、後から宗派の違いを知ったために「無駄だった」と責めないでください。分からない間も、静かに合掌して故人を偲ぶことは続けられます。自己流で二つの宗派の儀礼を組み合わせる前に、それぞれの作法を尋ねましょう。

参考:臨黄ネット「経典」/日蓮宗「仏教徒の生活について」

仏壇がない自宅で、どう手を合わせればよいですか

仏壇を用意するまで、お父さまを偲ぶことができないわけではありません。まずは落ち着いて手を合わせられる場所を整え、ご自身の暮らしの中に祈りの時間を持ってください。写真を見ながら思い出を語ることも、亡き人を忘れずに暮らすきっかけになります。

今後、仏壇やご本尊を迎える場合は、先にどのお寺に相談するかを決めると、購入や配置の迷いが少なくなります。宗派により、ご本尊や脇掛け、位牌の安置の仕方は異なります。写真や位牌だけを置く場所と、宗派の教えに基づいて整える仏壇は、区別して相談しましょう。

すでに作った「先祖代々」の位牌について

ご自身で位牌を用意されたのは、ご先祖さまを大切にしたいお気持ちからでしょう。宗派が違うと分かったからといって、慌てて捨てたり、作り直したりする必要はありません。

菩提寺へは、位牌に記した文字、実家や本家にある位牌との関係、どなたをお祀りするつもりで作ったかを伝えてください。写真を見せると説明しやすくなります。自宅での安置方法や、開眼などのお勤めをどのように考えるかも、そのお寺の教えに沿って確かめましょう。

同じご先祖さまを思うために、すべての家庭で同じ位牌を新しく作らなければならないわけではありません。すでにあるものを大切にしながら、ご家族が無理なく続けられる形を相談してください。

菩提寺には、このように相談してみてください

「父は臨済宗で、代々の先祖は日蓮宗です。実家に仏壇がありますが、私も別の住まいで手を合わせたいと思っています。これまでは般若心経を唱え、小さな先祖代々の位牌も作りました。日々のお勤めと位牌の安置を教えていただけますか」

このように、そのまま事情をお話しして構いません。お母さまにはお父さまの菩提寺を、本家のご家族にはご先祖さまの供養をお願いしているお寺を確認します。年忌法要などを一緒にお願いしたい場合も、受け入れ方は寺院によるため、事前に相談してください。

相談しただけで宗旨替えを決めなければならない、と気負うことはありません。「まず作法を知りたい」とお伝えになってください。

大切なのは、納得して続けられる供養です

お父さまを思うことと、ご先祖さまを大切にすることは、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。一方で、宗派それぞれの教えやお勤めには、大切に受け継がれてきた違いがあります。

その違いを尊重しながら、ご家族と話し、お寺に教えていただく。すべてを一度に整えようとせず、今日も手を合わせるところから始めていただければと思います。合掌

関連する仏事相談・参考資料

過去帖は自分で書いてもよいのでしょうか? ― 位牌や先祖の記録を整理するときの相談です。

お寺ネット「仏事相談」一覧 ― 仏壇・供養・宗派に関する過去の相談をご覧いただけます。

臨黄ネット「経典」/日蓮宗ポータルサイト「仏教徒の生活について」

※2008年の相談No.161・回答No.162をもとに編集しています。当時の回答と今回の加筆は区別して掲載しています。宗派・寺院により、お経、位牌、仏壇、法要の作法は異なります。個別のお祀りについては、現在ご縁のあるお寺にご確認ください。

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