「お寺で厳しい修行をすれば、お酒の問題を克服できるのでは」。大切な方を心配するあまり、そのように考えるご家族もおられるでしょう。
アルコール依存症は、気合いや信仰の強さで解決するものではありません。まず、依存症の専門医療や公的な相談窓口につながることが大切です。お寺は話を聴き、孤立しないよう支えることはできますが、通常の宿坊や修行体験を治療の代わりにすることはできません。
2008年にお寺ネットへ寄せられた相談を要約し、現在の読者に向けて加筆しました。古い回答と現在の解説を分け、相談先は2026年10月19日に公的機関の情報を確認しています。
ご相談:アルコール依存症の家族のために修行先を探したい
めがねさん/2008年1月18日 17:34/No.60「修行先のお寺探しています。」
勤務先の社長から、アルコール依存症だという奥様について相談を受けました。山奥のお寺で修行をして病気を克服してもらう案があり、真言宗のお寺を希望しているものの、どこへ相談すればよいかわからない、という内容です。
ご本人からの相談ではなく、詳しい病状や診断、治療の状況、ご本人の希望は書かれていません。この文章だけで状態を判断したり、受け入れ先を決めたりすることはできません。
当時の回答:専門医療への相談と、宿坊についての情報
巳朱さん/2008年1月19日 02:31/No.61
基本的にお寺は治療施設ではないため、アルコール依存症の専門医療機関や自助グループに問い合わせることを勧めています。当時掲載されたリンクは、現在の相談先として確認できる公的な案内へ置き換えました。
勝運寺山主さん/2008年1月20日 21:21/No.68
修行というより療養の相談ではないかと受け止め、高野山の宿坊寺院で療養を兼ねて預かっていた例に言及しています。ただし、回答当時も「現在は不明」とされています。
編集上の補足:この過去の記述は、現在の受け入れや医療体制を保証するものではありません。高野山の宿坊全体が依存症の療養を受け入れている、という意味でもありません。本記事では治療先として紹介していません。
お寺ネット住職から:責めるより、専門的な支援につなぐ
ご家族を助けたいというお気持ちは、よくわかります。しかし、「甘えをなくせば治る」「厳しく鍛え直せばよい」と考えると、ご本人も周囲も追い詰められてしまいます。依存症は意思の弱さや信仰不足と決めつけるものではありません。
厚生労働省は、依存症について、本人や家族だけで抱え込まず、専門機関や回復を支える場に相談することを案内しています。回復を目指す道筋はあります。宗派を先に決めるより、まず身体と心の状態に合った支援を探しましょう。参考:厚生労働省「依存症についてもっと知りたい方へ」
山奥に連れて行く前に知っておきたい離脱症状
アルコールへの身体依存がある場合、急に飲酒をやめたり大幅に減らしたりすると、手の震え、発汗、不眠などの離脱症状が出ることがあります。重い場合には幻覚やけいれんなどが起こることもあります。参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと依存」
医療につながらないまま、家族の判断でお酒を取り上げ、山奥のお寺で急な断酒をさせることは避けてください。安全な飲酒中止の進め方は医師に相談しましょう。これは飲酒を続けることを勧める意味ではありません。
けいれん、意識がおかしい、呼びかけに反応しないなどの緊急時は、寺院探しや通常の相談予約を待たず、119番などで救急の助けを求めてください。
ご本人の意思を尊重し、家族だけでも相談できます
「本人をお寺へ預ければ解決する」と決める前に、ご本人が何に困り、どのような支えを望んでいるのかを、落ち着いて話せる時に確かめたいものです。罰として修行をさせたり、本人に説明せず連れて行ったりする方法は勧められません。
受診に前向きでない場合でも、ご家族が先に相談窓口へ連絡し、声のかけ方や受診につなぐ方法を相談できます。家族自身の疲れや困り事も、相談してよい内容です。
| 相談したいこと | まずつながる先 |
|---|---|
| 診断・治療・離脱症状への対応 | 依存症を診療する医療機関。受診先が不明なら公的相談窓口へ。 |
| 本人が受診をためらっている | 保健所・精神保健福祉センターなどで、家族から相談する。 |
| 同じ経験のある人と話したい | 自助グループや家族会。公的窓口に地域の活動を尋ねる。 |
| つらさや宗教的な悩みを話したい | 信頼できるお寺。医療や相談支援とのつながりを保つ。 |
お寺にできることと、宿坊を考えるときの確認

お寺では、困り事を言葉にする時間を持つこと、安心して話を聴いてもらうこと、仏教の教えにふれることなどが支えになる場合があります。ただし、それを依存症の治療効果として保証することはできません。
治療を受けながらご本人が宿坊やお参りを希望されるなら、まず主治医に滞在や活動が可能かを確認し、お寺にも必要な配慮を相談しましょう。通院・服薬の継続、体調不良時の対応、近隣の医療機関、参加できない行事などを事前に確かめます。
真言宗を含め、同じ宗派でも宿坊の設備や受け入れ条件は異なります。宗派や「療養」という名称だけで、医療的な管理があると判断しないでください。医師の指示なく服薬を中止したり、断食など負担の大きい修行に参加したりしないことも大切です。
大阪で相談先を探すには
大阪府の「依存症専門相談」では、ご本人・ご家族・関係者からの相談を受け付けています。大阪市・堺市の方の窓口も同じ案内に掲載されています。居住地に合う窓口をご確認ください。
最初の電話では「家族のお酒の問題で困っています。本人はまだ受診していません。家族だけで相談できますか」と伝えて構いません。専門医療機関や地域の自助グループ・家族会を探す際も、窓口に尋ねてみましょう。大阪以外の方は、お住まいの地域の保健所や精神保健福祉センターにご相談ください。
相談を頼まれた従業員の方へ
めがねさんが、治療先を一人で選び、結果まで責任を負う必要はありません。「お寺では医療的な対応が難しい場合があるので、まず専門窓口へご家族から相談していただくのがよいそうです」と、確認した情報を伝えるだけでも助けになります。
本人の病状や私生活について、必要以上に聞き出したり職場で広めたりしない配慮も大切です。ご本人の同意なく、複数のお寺へ詳しい病歴を送ることは控えましょう。
お寺に救いを求める気持ちを否定する必要はありません。その思いを大切にしながら、医療や地域の支えにもつながる。私たち僧侶も、その一歩に寄り添ってまいりたいと思います。合掌。
関連する相談・参考資料
お寺ネットの仏事相談一覧
厚生労働省:依存症についてもっと知りたい方へ
大阪府:依存症専門相談
出典:お寺ネット旧仏事相談掲示板「修行先のお寺探しています。」(2008年1月18日〜20日、No.60・61・68)。投稿は要約し、個人の連絡先・旧画像・古い紹介先リンクは掲載していません。住職の解説と現在の相談先案内は今回の加筆です。医学的な説明は上記公的資料を参照した一般情報であり、個別の診断・治療は医療機関にご相談ください。

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