役目を終えたように感じる45歳女性の人生相談
お寺ネット 人生相談
相談番号:No.1080
相談者:アスパラさん
相談日:2008年1月26日
相談カテゴリー:人生相談・生き方・孤独・これからの人生
ご相談「これから何を目標に・・」
はじめまして。よろしくお願いいたします。
45歳、独身女性です。現在は無職で、家におります。
20代の頃に両親を亡くし、妹と二人姉妹で生きてきました。
妹は活発な性格で、40代になるまでワーキングビザなどを利用しながら各国を巡っていました。
一方、私は長女ということもあってか、頭が固く、不器用で、これまで仕事ばかりしてきたように思います。
小さい頃から虚弱体質で、現在はうつ病も患っています。
妹は3年前に結婚し、今は別のところで暮らしています。
妹が結婚した時、
「妹を無事に嫁に出すことができた」
という安堵感がありました。
けれど、それと同時に、
「では、これから私は何のために生きていけばいいのだろう」
という思いが強くなってきました。
今まで自分のために生きてきたのかと考えてみても、よくわかりません。
病気もあります。
ストレスで10キロほど太り、自分の見た目にも自信を失いました。
最近では、
「もう私の役目は終わったのではないか」
「私はもう、お払い箱なのではないか」
そんな気持ちになってしまいます。
これから何を目標にして、生きていけばよいのでしょうか。
住職からの回答
アスパラさん、ご相談ありがとうございます。
20代でご両親を亡くされ、それから妹さんと二人で歩んでこられたのですね。
仕事を続けながら、長女として、
「私がしっかりしなければ」
という思いもあったのではないでしょうか。
そして妹さんが結婚され、
「これで一安心した」
と思った。
ところが、それまで自分を支えていた一つの役割がなくなった時、
「では、私はこれから何のために生きるのだろう」
という空白が生まれたのかもしれません。
まず申し上げたいのは、
あなたの役目が終わったのではありません。
一つの役目が終わっただけです。
「役目」と「人生」は同じではありません
私たちは知らないうちに、自分自身を「役割」で考えてしまいます。
長女として。
姉として。
会社員として。
妻として。
母として。
誰かを支える人として。
もちろん、それぞれ大切な役割です。
しかし、
役割がなくなったら、その人の価値までなくなるのでしょうか。
そんなことはありません。
仕事を辞めたから、自分ではなくなるわけではありません。
妹さんが結婚したから、姉としての人生が無意味になるわけでもありません。
結婚していないから、人生が足りないわけでもありません。
あなたは「何かの役に立つためだけ」に生まれてきたのではないのです。
仏教では人生を「縁」の中で考えます
仏教には、
「縁起(えんぎ)」
という大切な教えがあります。
私たちは一人だけで存在しているのではなく、さまざまなご縁によって生かされています。
ご両親との縁。
妹さんとの縁。
仕事で出会った人との縁。
これまで助けてくれた人との縁。
そして、これから出会う人との縁。
人生のご縁は、45歳で終わるわけではありません。
これから50歳、60歳、70歳になっても、新しいご縁は生まれます。
ただし、そのご縁が必ずしも「結婚」である必要はありません。
新しい友人かもしれません。
趣味かもしれません。
仕事かもしれません。
地域とのつながりかもしれません。
お寺とのご縁かもしれません。
今まで知らなかった世界との出会いかもしれません。
人生には、まだ出会っていないご縁があります。
今すぐ「人生の目標」を決めなくてもいいのです
「これから何を目標に生きればいいのでしょうか」
というご相談ですが、
私は、
今すぐ大きな目標を見つけなくてもいい
と思います。
うつ病で苦しんでいる時には、遠い将来まで考えることそのものが大きな負担になる場合があります。
そんな時に、
「人生の目的を見つけなければ」
「もっと前向きにならなければ」
「外へ出なければ」
と自分を追い立てる必要はありません。
今はまず、
今日一日を穏やかに過ごす。
それも立派な目標です。
「病気を治さなければ」と焦りすぎないでください
当時の回答には、
「病気を一日も早く治すように専念する」
という助言がありました。
もちろん治療は大切です。
ただ、現在の私から申し上げるなら、
「早く治さなければ」と自分を追い込まないでください。
うつ病の回復には時間がかかることもあります。
調子の良い日もあれば、悪い日もあります。
医療機関にかかっているのであれば、主治医と相談しながら、焦らず治療を続けてください。
無理に元気になろうとしなくて構いません。
10キロ太った自分も、今の自分です
アスパラさんは、
「ストレスで10キロ太り、自信をなくした」
と書かれています。
鏡を見るたび、
「昔の自分とは違う」
と思われるのかもしれません。
しかし、人間の価値は体重で決まりません。
若さでも決まりません。
結婚しているかどうかでもありません。
仕事をしているかどうかでもありません。
病気になったから価値が下がるわけでもありません。
今は、
「こんな自分ではだめだ」
ではなく、
「今の私は、少し疲れているんだな」
と自分に声をかけてあげてください。
「何のために生きるか」より「今日は何をしてみようか」
人生の意味を考え始めると、とても大きな問題になります。
「私は何のために生まれたのだろう」
「私の使命は何だろう」
「これから何を成し遂げればいいのだろう」
答えが見つからないと、ますます苦しくなることがあります。
そんな時は、問いを少し小さくしてみましょう。
「今日は何をしてみようか」
朝、窓を開けてみる。
好きなお茶を飲む。
10分だけ散歩する。
昔好きだった音楽を聴いてみる。
お寺へお参りしてみる。
誰かに手紙を書いてみる。
体調が悪ければ、今日はゆっくり休む。
それでいいのです。
人生は「大きな目標」だけでできているわけではありません。
小さな一日の積み重ねが、人生です。
妹さんの人生と、自分の人生を分けてみる
これまで、
「妹を守らなければ」
「長女だからしっかりしなければ」
という気持ちがあったのかもしれません。
妹さんが結婚された今、
これからは少しずつ、
「私は何をしたいのだろう」
と考えてみてもいい時期ではないでしょうか。
妹さんの人生は妹さんのもの。
そして、
アスパラさんの人生は、アスパラさんのものです。
これは寂しいことではありません。
新しい人生の始まりでもあります。
「お払い箱」ではありません
人は物ではありません。
ですから、
人間に「お払い箱」はありません。
役に立つ時だけ価値があって、役に立たなくなったら捨てられる。
そんなものが人間の命ではありません。
仏教では、
諸行無常
と説きます。
すべてのものは変化します。
若さも変わる。
体も変わる。
仕事も変わる。
家族の形も変わる。
人間関係も変わる。
今までの生き方が変わる時には、不安になります。
しかし、
変わるということは、終わるということだけではありません。
新しいものが始まる余地ができた、ということでもあります。
これからの人生は「余生」ではありません
45歳。
これまで誰かのために頑張ってこられたのであれば、
これから少しずつ、
自分自身のための時間
を作ってもいいのではないでしょうか。
大きな目標はいりません。
結婚しなければならないわけでもありません。
仕事ですぐ結果を出さなければならないわけでもありません。
今は、
「今日を生きる」
「病気と付き合いながら、自分をいたわる」
「小さな楽しみを一つ見つける」
そこからでいいのです。
住職からひとこと
アスパラさん。
あなたの役目が終わったのではありません。
一つの役目を、終えただけです。
そして、役目がなくても、人は生きていていいのです。
これから出会う人。
これから見る景色。
これから感じる喜び。
まだ知らないご縁が、人生にはあります。
今すぐ「生きる意味」を見つけようとしなくても構いません。
今日は今日を生きる。
明日は明日を生きる。
その中から、
「ああ、これも悪くないな」
と思えるものが一つ見つかれば、それで十分です。
人生の目的は、歩き始める前に全部決めなくてもいいのです。
歩いている途中で見つかるものもあります。
合掌
よくある質問
Q1.人生の目標がありません。それでも大丈夫でしょうか?
大丈夫です。人生には大きな目標を持つ時期もあれば、目の前の一日を過ごすことを大切にする時期もあります。無理に「生きがい」を作ろうとしなくても構いません。
Q2.45歳からでも人生をやり直せますか?
「過去をなかったことにして最初から」という意味ではありませんが、これからの生き方を変えることは何歳からでもできます。年齢だけで新しいご縁や経験の可能性がなくなるわけではありません。
Q3.独身なので将来が不安です。
結婚しているかどうかだけで将来の安心が決まるわけではありません。家族以外にも、友人、地域、仕事、趣味、福祉、寺院など、さまざまなつながりがあります。少しずつ頼れる場所を増やしていくことも大切です。
Q4.うつ病で何もする気になれません。
無理に前向きになる必要はありません。治療中であれば主治医と相談しながら、まず休養や治療を大切にしてください。「今日は休む」ということも、その日の大切な過ごし方です。
Q5.人の役に立てない自分には価値がない気がします。
人間の価値は「どれだけ役に立ったか」だけで決まるものではありません。誰かの役に立てない時期があっても、生きていてよいのです。
*この記事は、過去にお寺ネットに寄せられたご相談記事を、再度見やすいように編集し、多くの方の悩みを代弁した形で、加筆修正し、現在の住職が回答を寄せております。同じような悩みをお持ちの方の為に役立てれば幸いです。

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