お寺ネット 仏事相談
相談番号:No.161
投稿者:ゆめ さん
投稿日:2008年2月12日
相談タイトル:一家に違う宗派
宗派の問題 ご相談内容
初めてご相談いたします。
1年前に父が他界しました。
現在、母は元気で、実家には仏壇がありますが、私自身も父の供養をしたいと思い、毎日手を合わせています。
同時に、代々のご先祖さまの供養もしたいと考えています。
ところが最近、代々のご先祖さまは日蓮宗だったことを知りました。
父は長男でしたが、事情があって次男が家を継いだため、父は臨済宗です。
日蓮宗と臨済宗ではお経も違います。
私はこれまで毎日「般若心経」を唱えてきましたが、宗派が違うことを知り、どうすればよいのか分からなくなってしまいました。
自宅には仏壇はありませんが、先祖代々の小さな位牌を作りました。
父やご先祖さまを、どのようにお祀りし、供養すればよいのでしょうか。
また、お経は何を唱えればよいのでしょうか。
当時のお坊さんからの回答
回答者:賢潤房
回答番号:No.162
投稿日:2008年2月12日
ご先祖さまの信仰を大切にされるのであれば、日蓮宗の信仰を受け継ぐという考え方があります。
一方、お父さまが実家を継がれておらず、今後、日蓮宗の菩提寺とお付き合いをする予定がないのであれば、ご縁のあった臨済宗を大切にしていくことも一つの方法でしょう。
大切なのは、お父さまの供養や仏さまへの信仰を、相談者さまやお母さまが納得して続けられることではないでしょうか。
お寺ネットからの回答
今回のご相談で、まずお伝えしたいことがあります。
家族やご先祖さまの宗派が違うからといって、供養ができなくなるわけではありません。
「父は臨済宗、ご先祖さまは日蓮宗。では私はどちらの宗派で供養すればいいのだろう?」
と迷われるお気持ちはよく分かります。
しかし、宗派が違うことで、ご先祖さまを想って手を合わせる気持ちまで否定されるものではありません。
なぜ一家の中で宗派が違うことがあるのでしょうか?
決して珍しいことではありません。
結婚、分家、養子、転居、菩提寺とのご縁などによって、同じ家系の中でも宗派が変わることがあります。
今回も、代々のご先祖さまは日蓮宗であったものの、お父さまは事情があって本家を継がず、臨済宗とのご縁を持たれたということです。
ですから、
「先祖が日蓮宗だから、自分も必ず日蓮宗でなければならない」
と一律に考える必要はないでしょう。
一方で、現在も菩提寺との関係が続いている場合には、そのお寺とのご縁も大切にしてください。
父と先祖の宗派が違う場合、どちらを供養すればいい?
これは「どちらか一方しか供養できない」という問題ではありません。
お父さまにも手を合わせる。
ご先祖さまにも手を合わせる。
それでよいのです。
供養とは、
「あなたのことを忘れていません」
と手を合わせることでもあります。
宗派が違うからといって、父を供養すれば先祖を供養できない、あるいは先祖を供養すれば父を供養できない、というものではありません。
般若心経を唱えてもよいのでしょうか?
ここは少し整理して考えましょう。
宗派によって、日常のお勤めで読むお経や唱える言葉は異なります。
たとえば臨済宗では般若心経が読誦されますが、日蓮宗では法華経を重んじ、「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えることを大切にします。
ですから、特定の宗派の正式な作法として供養したい場合には、その宗派の寺院に教えていただくのが一番確実です。
しかし、ご自宅で故人を偲び、
「今日もありがとうございます」
と手を合わせることまで、宗派の違いを恐れる必要はありません。
分からないからといって、手を合わせること自体をやめてしまう必要はないのです。
自分で「先祖代々の位牌」を作ってもよいのでしょうか?
今回の相談では、ご自身で小さな「先祖代々」の位牌を作られたとのことです。
お気持ちはよく分かりますが、位牌については、宗派によって考え方やお祀りの仕方が異なります。
また、すでに実家に仏壇や位牌がある場合には、同じご先祖さまの位牌を別の家庭でも新たに作る必要があるのか、確認した方がよいでしょう。
新しく位牌を作る前に、現在お付き合いのある菩提寺へ相談することをおすすめします。
すでに作られている場合も、慌てて処分する必要はありません。まず寺院へ事情を説明して相談してください。
「どの宗派が正しいか」ではなく「どのご縁を大切にするか」
宗派について考え始めると、
「先祖と同じ宗派でなければいけないのか」
「父と同じ宗派にすべきなのか」
「違うお経を唱えたら失礼になるのか」
と、だんだん不安になってしまうことがあります。
けれども、今回の相談者さまは、もともと
「亡くなった父を供養したい。そして、ご先祖さまにも手を合わせたい」
という思いから始まっています。
私は、その気持ちを一番大切にしていただきたいと思います。
宗派とは、本来、私たちを悩ませるためにあるものではありません。
仏さまの教えに出会い、亡き人を偲び、そして今を生きる私たち自身が仏道を歩んでいくためのご縁です。
仏教は一つ、宗派はその教えへの道
山の頂上を目指すにも、いくつもの登山道があります。
登る道は違っていても、仏さまの教えを求め、亡き人を想って手を合わせる心には通じるものがあります。
日蓮宗には日蓮宗の大切な教えがあります。
臨済宗には臨済宗の大切な教えがあります。
どちらがご先祖さまをより大切にしている、という話ではありません。
ですから、まずは現在ご縁のあるお寺に、
「父は臨済宗ですが、代々の先祖は日蓮宗です。私はどのように供養していけばよいでしょうか」
と、そのまま相談してみてください。
そして、ご自身が納得できる形で、これからも手を合わせてください。
宗派が違っても、ご先祖さまを大切に想う心まで分かれることはありません。
何を唱えるかも大切ですが、
誰を想い、どのような心で手を合わせているか。
私は、そこを何より大切にしていただきたいと思います。
合掌
この相談のポイント
1.家族やご先祖さまの宗派が違うことは珍しいことではありません。
2.宗派が違っても、お父さまとご先祖さまの両方を供養できます。
3.宗派によって日常的に唱えるお経や作法は異なります。
4.特定の宗派の正式な作法で供養したい場合は、その宗派の寺院へ確認しましょう。
5.実家に位牌がある場合、新たに「先祖代々」の位牌を作る必要があるかは菩提寺へ相談すると安心です。
6.「どの宗派が正しいか」よりも、これからどの仏縁を大切にしていくのかを考えることが重要です。
7.何より大切なのは、亡き人やご先祖さまを想って手を合わせる心です。
同じことで悩んでいる方へ
「夫婦で宗派が違う」
「実家と嫁ぎ先の宗派が違う」
「父と先祖の宗派が違う」
「宗派が違う場合、どのお経を唱えればよいのか」
といった相談は少なくありません。
家族の形が多様になり、故郷を離れて暮らす方も増えた現在では、一つの家庭の中に複数の宗派とのご縁があることもあります。
分からないからといって、供養をやめる必要はありません。
まず手を合わせる。そして、分からないことはお寺に尋ねる。
そこから始めてみてください。
※この相談は2008年当時に「お寺ネット」へ寄せられた仏事相談をもとに、読みやすく整理し、現在の住職としての見解を加筆したものです。宗派・菩提寺によって、お経、位牌、仏壇、供養の作法や考え方は異なります。

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