お寺ネット 人生相談
相談番号:No.567
相談者:よいみちさん
相談日:2008年1月15日
相談カテゴリー:人生相談・仕事・人間関係・生き方
ご相談「仕事も人も怖くなってしまいます」
はじめまして。よいみちといいます。今年で28歳になります。
私は今まで、どんな仕事についても、すぐに先のことが不安になってしまいます。
そのうち仕事そのものや、職場の人たちまで怖くなり、結局辞めてしまうことを繰り返してきました。
とにかく、この世のすべてが怖いように感じます。
「このままではいけない」
と何度も自分に言い聞かせてきました。
仕事を辞めても、そのまま何もしなかったわけではありません。
職業訓練に通って国家資格を取ったり、南の島への移住に挑戦したり、国家公務員Ⅱ種の資格を取ったり、自分なりに頑張ってきました。
それでも、人の中に入るとすべてが怖くなり、何もできなくなってしまいます。
その繰り返しで、ますます人や社会に対する恐怖心が大きくなっています。
今、次に挑戦してみたいことが一つあります。
しかし、
「また失敗するのではないか」
「28歳から始めるなんて恥ずかしいのではないか」
と、不安で押しつぶされそうになります。
思い込みでも構いません。
自分を受け入れられる自分になりたいです。
人間は怖い。
それでも、自分の人生から逃げたままにはしたくありません。
お寺には体験修行というものがあるそうですが、長期間受け入れてくださるところはないでしょうか。
逃げ出してしまう自分を叱ってくれるような場所があれば、教えていただきたいです。
住職からの回答
よいみちさん、ご相談ありがとうございます。
文章を読んで、まず一つ申し上げたいことがあります。
よいみちさんは、
「逃げてばかりの人」ではありません。
職業訓練に通った。
資格を取った。
公務員試験にも挑戦した。
環境を変えようと移住にも挑戦した。
そして今も、
「次にやってみたいことがある」
と書いておられます。
何度怖くなっても、何度つまずいても、そのたびに別の道を探してこられた。
私はむしろ、
何度も人生を立て直そうとしてきた方
だと思います。
「仕事が続かない」と「何もできない」は違います
仕事を辞めることが続くと、
「自分は何をやっても続かない」
「社会人として失格だ」
「自分は駄目な人間だ」
と考えやすくなります。
しかし、事実を一つずつ見てみましょう。
仕事は続かなかった。
でも、職業訓練には通った。
資格も取得した。
新しい土地へ行こうともした。
つまり、
「何もできない人」ではありません。
人との関わりや職場という環境に入った時、強い恐怖や不安が出てくる。
そこを分けて考える必要があります。
「自分を叱ってくれる場所」を探す前に
よいみちさんは、
逃げ出す自分を叱ってくれる場所
を探しておられます。
しかし私は、ここが少し気になります。
本当に今必要なのは、
もっと厳しく叱られることでしょうか。
これまで何度も、
「このままじゃ駄目だ」
「逃げてはいけない」
「もっと頑張らなければ」
と、自分自身を叱ってこられたのではないでしょうか。
それでも苦しい。
だとすれば、さらに自分を追い込むことだけが答えではないように思います。
必要なのは、
「なぜ私はこれほど怖くなるのだろう」
と、自分の心を丁寧に見ていくことではないでしょうか。
お寺の修行は「自分を罰する場所」ではありません
坐禅、写経、作務、読経。
お寺での修行には、日常生活から少し離れて自分を見つめる良さがあります。
生活のリズムを整えたり、静かな時間を持ったりすることもできます。
ですから、お寺で修行を体験してみたいというお気持ちそのものはよいと思います。
ただし、
「駄目な自分を叩き直してもらおう」
という目的だけで修行へ行くことは、私はあまりおすすめしません。
仏教の修行は、自分を嫌いになるためにするものではありません。
自分の心を観察し、自分の執着や恐れに気づき、少しずつそれらとの付き合い方を学んでいくものです。
仏教の「観る」ということ
仏教では、自分の心をよく観察することを大切にします。
怖くなった時、
「怖がってはいけない」
と押さえつけるだけではなく、
「ああ、今、自分は怖いんだな」
と一度認めてみる。
不安になった時も、
「こんなことで不安になる私は駄目だ」
ではなく、
「今、不安が出てきているな」
と眺めてみる。
自分と不安を少し離して見るのです。
「私は駄目な人間だ」
ではなく、
「私は今、『自分は駄目だ』という考えに苦しんでいる」
と考えてみる。
ほんの少し言葉を変えるだけですが、心との付き合い方も変わってきます。
28歳から始めることは、恥ずかしいことでしょうか
まったく恥ずかしいことではありません。
28歳で新しいことを始める人もいます。
40歳で始める人もいます。
60歳で始める人もいます。
年齢を気にして、
「もう遅い」
と考えているうちに一年が過ぎてしまいます。
そして一年後には、
「あの時始めておけばよかった」
と思うかもしれません。
新しいことを始める時に大切なのは、
「絶対に成功するか」
ではありません。
「やってみたいと思う自分が、まだここにいる」
ということです。
「また失敗するかもしれない」でもいい
次に挑戦したいことがある。
しかし、
「また駄目になるかもしれない」
と怖い。
当然だと思います。
過去に苦しくなった経験があれば、新しい一歩が怖くなるのは不思議ではありません。
だから、
「今度こそ絶対に失敗しない」
と自分に約束しなくていいのです。
代わりに、
「もし苦しくなったら、その時また考えよう」
くらいでもいい。
人生には、やってみなければわからないことがあります。
強い恐怖が生活を妨げているなら、専門家にも相談してください
よいみちさんは、
「仕事も職場の人もすべて怖くなって辞めてしまう」
「この世のすべてが怖い」
「悪循環で恐怖心がますます大きくなっている」
と書かれています。
ここまで強い不安や恐怖が仕事や日常生活を妨げているのであれば、
「性格だから」「根性がないから」
だけで片づけないでください。
心療内科や精神科、心理職などに一度相談することも考えてよいと思います。
原因や状態を自分だけで決めつける必要はありません。
「仕事を始めても、人や職場が怖くなって辞めてしまいます」
と、そのまま相談すればよいのです。
お寺で心を整えることと、必要に応じて医療や専門的な支援を受けることは、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。
自分を受け入れるとは「何でも許すこと」ではありません
よいみちさんは、
「自分を受け入れられる自分になりたい」
と書かれています。
私は、この相談の中で一番大切な言葉だと思いました。
自分を受け入れるとは、
「仕事を辞めても何でもいい」
「努力しなくていい」
ということではありません。
怖がる自分。
逃げてしまう自分。
それでも挑戦しようとする自分。
資格を取った自分。
失敗した自分。
もう一度やってみようと思っている自分。
その全部を、
「これが今の自分なんだ」
と認めることです。
住職からひとこと
よいみちさん。
これ以上、
「逃げる自分を叱ってください」
と誰かにお願いしなくてもいいのではないでしょうか。
あなたはもう十分、自分を叱ってきたように思います。
これから必要なのは、
叱ることより、知ること。
なぜ怖いのか。
どんな時に怖くなるのか。
何ならできるのか。
どこまでなら頑張れるのか。
それを一つずつ知っていくことです。
そして、次にやってみたいことがあるのなら、
最初から人生を賭けなくて構いません。
小さく始めてみてください。
うまくいかなかったら、また考えればいい。
道を変えてもいい。
休んでもいい。
仏教では、人生を「修行」と表現することがあります。
修行とは、
一度も迷わない人になることではありません。
迷った時に、もう一度道を探せる人になることです。
これまで何度も道を探してきたあなたなら、今回もまた、一歩ずつでいいのです。
合掌
よくある質問
Q1.仕事が怖くなり、すぐ辞めてしまいます。甘えでしょうか?
「甘え」と決めつける必要はありません。強い不安や恐怖が繰り返され、仕事や生活に大きな影響が出ている場合は、心身の状態について専門家へ相談することも大切です。
Q2.28歳から新しいことを始めるのは遅いですか?
年齢だけを理由に諦める必要はありません。大きな決断として考えすぎず、まず小さく試してみる方法もあります。
Q3.お寺で長期間修行すれば自分を変えられますか?
寺院によって受け入れ内容は異なります。また、修行をすれば必ず不安や恐怖がなくなるわけではありません。「自分を罰する場所」ではなく、自分を見つめる機会として考えるのがよいでしょう。
Q4.坐禅や修行と心療内科、どちらがいいですか?
二者択一ではありません。強い恐怖によって生活に支障が出ている場合には、まず医療・心理の専門家に相談し、そのうえで無理のない範囲で坐禅などを取り入れる方法もあります。
Q5.自分を受け入れるにはどうしたらいいですか?
「怖がってはいけない」と否定するところからではなく、「今、自分は怖いんだな」と気づくところから始めてみてください。
この相談のまとめ
この相談で大切なのは、
「逃げない人になること」だけを目標にしないことです。
怖くなる自分を責め続けるのではなく、
なぜ怖いのかを知る。
必要なら助けを借りる。
できるところから挑戦する。
そして失敗したとしても、そこで人生全部を失敗にしない。
何度でも、次の一歩を探せばいいのです。

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